「ナイロン66原料」

ポリマー原料

最近は現業から離れていることもあり、耳にすることもなくなりましたが、過去20年程にわたって常にナイロン66の供給不安の常態が続いていました。その背景と解消(?)の要因について述べていくこととします。まずはナイロン66について。

ナイロン66といえば世界初の合成繊維としてDuPontが開発した製品で、ナイロンという商品名も現在も一般名詞化している偉大なる化学製品です。

市場が成熟飽和してしまったのか、ここ10年程は世界需要は殆ど伸びていませんが、一方でエンプラの一つとして、とりわけ中国では原料及びポリマーへの設備投資が過剰な状況に陥っているのも事実です。

ナイロン66は、アジピン酸とヘキサメチレンジアミンの共重合によって合成されます。ナイロン「66」の意味はアジピン酸とヘキサメチレンジアミンの炭素数のともに「6」「6」から由来します(ちなみにナイロン6はカプロラクタムの炭素数6が由来です)。

下記グラフに示す通り、ナイロン66の需要が伸び悩む状況下で2種類の原料の需要も伸び悩んでいるのが実情です。

まずはナイロン66の原料の一つである「アジピン酸」から。アジピン酸需要は下記のとおり2020年のコロナ禍による落ち込みがあったものの、順調に需要が拡大しています。

ナイロン66の需要の伸び悩む一方で、ポリエステルポリオール需要の拡大が続く事でアジピン酸需要におけるナイロン66の比率は年々下降中。かつてはアジピン酸需要の半分を占める位置にありましたが、現在では4割程度まで低下しています。

アジピン酸供給については特に問題が生じてはいません。あえて課題と言えば、原料のKAオイルを酸化する際に酸化剤として硝酸を利用するために大量の二窒化酸素の発生の問題が大きな課題となっています。

つぎに長年のナイロン66供給不安の要因であった、もう一方の原料であるヘキサメチレンジアミンについて述べていくこととします。まずはヘキサメチレンジアミン(及びその原料であるアジポニトリルについて)述べて行きます。

ヘキサメチレンジアミンは炭素数6の脂肪族ジアミンで、85%前後がナイロン66の原料として、又残りの15%程度はヘキサメチレンジイソシアネートに転換されます。また原料は100%がアジポニトリルで、アジポニトリルの需要先は全量ヘキサメチレンジアミン向けです(下記誘導品マップにOthersとありますが実質はゼロ)。

さて次に課題、問題であったアジポニトリルの生産についてです。生産方法は主に二製法です。一つはブタジエンと青酸を原料とする製法であり、もう一つはアクリロニトリルの二量化法です。最近、中国の華峰化学がアジピン酸のアンモ化による生産を始めました。

世界の供給の8割近くを占めていたブタジエン法は、DuPont社が開発し現在はInvista社が継承している技術ですが、石化原料のライト化に伴うブタジエンの供給不安や、また設備そのものが全て経年しているために劣化が生じていることが大きな不安要因になっていました。経年劣化を背景としてInvistaのオレンジ郡プラントが閉鎖しました。

またアクリロニトリル法についてはブタジエン法にひして生産が不安定であることと歩留まりが低い事が以前から言われています。なお規模としては小さいですが、旭化成が閉鎖の決定を発表ずみです。

最後に不安定要因の背景の一つと、その解消について述べて行きます。ここ5年で供給体制の状況が大きく変化してきています。2020年時点ではButachemi(実質Invista)とインビスタの二拠点。それにAscened社を加えた四拠点の寡占状態でした。

一方、インビスタが米国オレンジ拠点を閉鎖し、替わりに上海に新拠点を稼働開始しました。またナイロン66需要の拡大を見込んで中国勢が多数進出してきています。ただしこの中国勢の進出がナイロン66の需給には現時点ではあまり大きな影響が与えているとは思えない状況です。

                                         以上

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