日本では殆ど縁のない天然ガス液(NGL)について述べることにします。日本においてはNGLの生産は石油精製の際にLPGとして生産されますがNGLとして論じられることはありません。かつNGLの形として輸入されることもありませんから石油業界の関係者でも日本において実務で携わることのない原油のタイプ(製品ではありません)と言えましょう。
ただしNGLはエタン、プロパン、ブタン及びガソリンといった経済的有効な成分を主成分としいますから、エネルギー及び化学産業に大きく影響を与える石油成分の一つになります。以下、NGLについて簡単にのべていきます。
さて、下記グラフはExxonMobil社が2014年に発表した資料からですが、今後のオイル(含バイオ油)需要をタイプ別に示したものです。その中で従来の原油種の産出量が漸減する一方で、NGL、深海油田、オイルサンドの開発が進み需要が年々拡大する予想を行っています。オイルピークを迎えると言われていますが、NGLの市場が拡大し重要性が増していることが分ります。

まずはNGLの定義についてJOGMECの定義から引用します。
天然ガス液(natural gas liquids) NGL 坑井を通じて地下から産出する天然ガスから分離・回収された液体炭化水素の 総称で、天然ガス液と訳される。この液体は C3 のプロパンから C8 ~ C10 くらいまでの分子の混合物であって、圧力・温度を制御して分離を繰り返せば、LPG(C3+C4)と天然ガソリン(C5~C8主体)との2種の製品が採取できる。NGL というときはこれらを含む総称である。とされてます。
つぎにNGLのプロダクトフローを下記に示します。 NGLの供給源は大きく二ルートに分かれます。一つは天然ガス生産時に随伴ガスとして産出される供給元です。天然ガスの場合従来のガス(ドライガス)の場合はNGLは殆ど含まれませんが、米国のシェールガスの場合はNGLの含有量は高くなります。
次に第二ソースは原油で、蒸留処理を行うことで蒸留処理量の約5%がNGLとして産出されます。原油からの場合はLPGとして直接取り出されるのでNGLは統計上の呼称といえるかもしれません。一方NGLから生成される製品は、エタン、プロパン、ブタン、ガソリンとなります。製品については次回以降の投稿にて述べて行きたいと思います。

以下NGLの生産方法フローを二つ。一つ目は石油精製のCDUプロセス、二つ目は天然ガスプロセスです。CDUでの位置づけは石油成分のうち最も軽質な成分として蒸留処理で取り出される製品です。一方の天然ガスプロセスでは天然ガスの主成分のメタンとその他NGLを蒸留分離する工程です。


以上から2022年時点でのNGLの供給源別の成分別産出量と、全体の成分別産出量の推定を行いました。この件については、今後、天然ガスの産出量の増加(とりわけ米国)により比率の変化が起きることが推定できますので要観察ですし、リバイス必要です。

次に天然ガス由来のNGLの成分分離・製品生産方法について述べます。石油精製装置とは異なりNGL分離装置は非常に簡易な装置になっています。CDUと基本構造は同じで、成分の沸点差を利用して成分を分離します。下記図の右側に示すとおり、沸点差が大きいので簡易な設備になります。

さて、お話は最初に戻ってNGLの生産動向について述べて行くことにします。下記グラフは世界のNGL生産量の推移を示します。ここ四半世紀で約2.5倍に増大しているのですが要因はただ一つ米国における大増産です。2010年頃までは約200万BDの生産量であったものが2025年時点で約3倍の600万BDまで急増しています。
今後については、世界市場では石油精製量が頭打ちになるため生産量の頭打ちが予想される一方で、天然ガス開発が更に進むことでNGLの供給バランスの変化が予想されます。

上述の通り米国のNGLの生産増が顕著ですが、その要因は天然ガス増産で始まったシェール革命に起因します。米国におけるシェールガス生産の本格化は2007年頃から始まりました。数年間は天然ガス生産の増産が進みましたが、増産とともにガス価格が下落し採掘会社の採算性の悪化が進むことになってしまいました。一方ガス開発を進めてみると、シェール層にはNGLを主成分としたオイルが多量に含有していることが判明。NGL増産が進み、採掘会社の採算性向上に寄与することとなり増産が更に進むことになりました。
下記EIAが発表している米国のNGL産出量推移と今後の予想です。2030年頃にはピークを迎えるものの引き続き産出量は増加の傾向にあり、世界のNGL及びエネルギー、石油化学産業に大きな影響を与えるものと推測されます。

以上」

