今回は古典的な化学品の一つである「無水マレイン酸」について取り上げます。個人的な思い出にすぎませんが、化学会社に入社して無水マレイン酸の構造式を見たときに、「何て複雑な構造式なんだろう。コストも売値も高いんだろうな」と感じた次第。化学知識を全くもって知らずに入社した典型的な事務系社員だったと思います。現実は無水マレイン酸は決して高値の製品ではありませんでしたし、他の基礎化学品の規模と比べてみたら、寧ろ安価な製品位置づけという感覚でした。
さて無水マレイン酸の定義は石油化学工業協会の言葉の定義にはなかったのでWikipediaより引用します。複雑に感じた無水マレイン酸の構造式を示します。

先ずは無水マレインの製造方法について述べて行きます。無水マレイン酸の生産はベンゼンの酸化法による生産から始まりましたが、欧米においてベンゼンの不足の状況が生じてブテン/ブタンを原料とするBB留分の酸化法が開発されました。現在はブタン酸化法が全体の8割程度を占める生産状況となっています。
なお、ブタン法、ベンゼン法とも原料選択率の低さが課題で現在も解消されていません。ブタン法の場合はブタンの選択収率は5割前後、ベンゼンの場合は7割前後になります。ただし一方でブタン法、ベンゼン法とも原料が燃焼されることで多量の熱と蒸気が発生しますから、この熱と蒸気を他の製品で蒸気・熱を生産に必要とするプラントに販売することで事業収益をカバーする収益構造になっています。


次に無水マレイン酸の市場を見て行きます。かつて無水マレイン酸市場は大きく伸長すると言われていましたが、下記グラフのとおり頭打ちの状況で低成長の化学品となっています。
以前に言われた市場の成長要因はブタンジオール生産の拡大です。90年代に世界に先駆けて東ソーと東燃化学が事業参入しましたが、両社とも参入後僅か数年で撤退しました。その後も世界で数社が参入を果たしましたが、大きく拡大することは無く現在は数プラントが稼働するに留まっています。
なお無水マレイン酸の誘導品の約6割を占める不飽和ポリエステル市場ですが、建材や船舶需要が中心であり、今後も大きく伸びる要因にはなりません。他の誘導品も同様に市場を大きく拡大する要因とはなりません。



最後は簡単に、無水マレイン酸の三大用途である不飽和ポリエステル、有機酸、それにブタンジオールの製造に無水マレイン酸が係る製造フローを示します。



以上」

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