「ナフサ」って何だ?

化学品原料

前稿にて石油製品としてのナフサの位置づけについて簡単に纏めてみました。今回は石油化学製品のナフサについて深堀して述べていきます。

再度、日本石油化学工業協会のHPよりナフサの定義について貼り付けます。             ナフサ(naphtha)                                      石油化学の出発原料。原油を常圧蒸留した際、沸点範囲が30℃から170℃位の温度範囲で得られる軽質留分がこれに該当する。 蒸留範囲の違いによって軽質ナフサ、重質ナフサ、この両者を含むフルレンジナフサに大別される。これらの留分は揮発油でもあり、粗製ガソリンとも呼ばれる。比重は0.7前後。 液体。

日本において殆どのナフサは石油化学のナフサ分解炉に投入されてエチレンやプロピレン等の石油化学の基礎原料として消費されています。この件については更に別稿にて述べていきたいと思いますが、日本、韓国それに中国に欧州などではナフサが分解炉の原料の中心となっている一方で、エタン産出量が豊富な米国ではナフサがガソリン原料にブレンドされる他に輸出ポジションにあります。また中東では分解炉向け原料はエタンやLPGが中心で、ナフサは主に輸出される状況であり地域によってナフサの需給の状況は異なる状況です。

 さて、正式な統計が得られていないのでナフサの生産量と石油化学向けナフサ需要量の地域国別シェアの推定をパイグラフにしてみました。特徴としては米国、中東はともに大幅な輸出のポジション。中国、日本など北東アジアはナフサ生産が需要に追い付かないため輸入ポジションというのが特徴といえます。また分解炉設備を有しない国でも石油精製は行われているので、産出されたナフサの多くが輸出されていることになります。(生産は石油精製量の統計より作成。一方消費はエチレン原料比とエチレン生産量より作成しています)

 次にナフサのサプライチェーンを以下簡単に纏めてみました。供給の中心方法は原料蒸留法が中心です。また製品としてのナフサは軽質と重質のナフサに分けられますが、産出量としては2:1の比率で生産されています。一方、需要の中心はナフサ分解炉、分解ガソリンに向けられています(約7割)。

上述にてナフサの種類を「軽質」「重質」に言及しましたので、この点につき両者の違いの概要について示します。化学的な違いは第一に炭素数の違い。また構造的には軽質がアルカンが中心であるにに対して、重質ナフサは脂環族や芳香族が中心になっています。この組成の違いが生成する化学品の違いになって現出することになるわけです(End Products)。

 上述のうち軽質ナフサの成分表を示します。一例では炭素数の5と6のパラフィンが約7割を占めることが示されています(*数値はwt%です)。構造式で示した物質はあくまで一例です。また重質ナフサデータが入手できた時点でご報告いたします。

 さて、今般ナフサ騒動となっているのは、ナフサが不足して様々な化学品の支障が生じているとされてはいますが、今回のサプライチェーンの支障は、ナフサの確保ではなく、ナフサからの生成物である樹脂、あるいはその加工品や溶剤の供給網に混乱が生じているという事情があります。ナフサと同様の石油製品であるガソリンや軽油は消費者市場においては混乱は生じていません。(政府の肩を持っているわけではありませんぬ)                                   ところで軽質ナフサを一般消費者が直接使おうにも、危なくって使えやしません。すぐに引火して火災を起こしてしまいますよ。

 次にナフサの主要向け先である石油化学向け原料、水蒸気分解向けのお話に移りますが、普段石油化学に縁遠い方々には何のこっちゃ?というお話です。弊方も就職した頃には全く理解していませんでしたし、興味すら持てなかったと反省しています。                         さて、日本におけるナフサ需要の殆どは以下に示します水蒸気分解の原料となります。水蒸気分解、つまり日本においてはナフサ分解炉に投入されて各種基礎石油化学原料となります。石油化学工業協会のHPにも下記図が示されています。ナフサを分解して炭素数の小さな「エチレン」(C2)「プロピレン」C3)などの基礎化学原料を生成しますが、エチレンの生成量が一番大きいので「エチレン」プラントとも呼ばれています。

参考としてナフサも含めた水蒸気分解炉の原料及び関連物質、製品名の一覧を示します。2010年頃まではナフサが原料の中心でしたが、米国のシェール革命の進展がエタン、LPGの大幅増産をもたらしました。とりわけ米国においてナフサからガス原料への転換が進むとともに、加えてエタンを原料とする新設投資が行われ世界の原料状況が大きく変わってしまいました。下記原料構成の図はWood Mackenzie社の資料から引用しています。

さて、原料構成比率が変化はあるものの引き続き石油化学向けナフサ需要の拡大は引き続いています。下記作表はナフサ生産量のうち、7割が石油化学向けという前提として重量換算したものです。また右軸折れ線グラフはナフサ投入量からエチレン生産量を算出した数値です。(筆者作成図)

 ナフサを分解すると以下の通りの生成比率が代表例とされます。なお日本においてはプロピレン需要が強いので、プロピレンを多く生産できるように生産量がコントロールされています。          上述しましたが、分解炉の生成物の生産量の一番大きな製品はエチレンです。別稿にて原料別のエチレン及び他の製品の生成例について述べていくことにいたします。

 最後に今後のナフサ需要の見込みですがIEAは以下の通りに示しています。2025~2027年のうちで世界はオイルピークを迎え今後は原油需要は漸減するとの予測を示していますが、昨今では減少するとされる要因の一つの輸送機器の電動化は停滞を予想よりも早く迎えてしまいましたし、また再生エネルギー転換への政策も数多く失敗し停滞する現象が現れてきているのでオイルピークを迎えたのかは定かではありません。むしろ今後も石油需要が拡大し続ける事も考えられます。                     一方石油需要全体が縮小すると予想される状況下でも、石油化学向け石油需要は大きく拡大することが予想されています。引き続き化学品需要が増大するという点と、拡大してきたエタン&LPG生産が頭打ちが予測されることから、ナフサ需要の拡大が見込まれています。

                                        以上」

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